店の前を通過する度に気になる「D」があった。
帽子(キャップ)である。
スチャダラパーのBOSEが「B」のロゴが入ったキャップをよく被っているように、僕は「D」を被りたいと思うようになり、以前買ったがすぐ飽きた。
安かったこともあり衝動的に買ったものだ。
でも今回の「D」には少し時間を要した。
ショーウィンドウを眺めては通り過ぎを繰り返し、「次に通りがかった時にまだ飾ってあったら買おう」を決め、たまたまクリスマスがその日になった。
店内に入り、まずは同じものがないか物色。
ないことを確認し、店主に「あのショーウィンドウのDを被ってみたいのですが…」と。
快く持ってきてくれた。
うまく言えないが、手に取った瞬間から「あ、これだ」を思った。
実際、ショーウィンドウを眺めている時から似合う自信があった。
なので被ってみる前から買うことをほぼ決めていたのだが、念のため被ってみると案の定イメージ通りだったので、「これ、ください」と即決。
店内に入ってから購入を決めるまで、淀みのないスムーズな流れだったが、ひとつ、最重要とも言えることを忘れていた。
値札を見ていなかったのだ。
頭に接する部分(スベリ)がレザーだったことや、バイザーの裏の色が見たことのないグリーンだったこと。そして何より、昔ながらの製法で丁寧に作っている帽子であることを店主が饒舌に説明してくれたことから、お高めだろうとは思った。
レジに行き、額が表示される部分を刮目。
高めじゃなく「高い」だったら謝ろうと思っていたが、高めの範疇だったのでホッとし、お会計を済ませた。
帰宅してからまじまじと眺め、鏡の前でファッションショー。
うん、いいね!
これまでにないフィット感。
これがクタったら、また同じものが欲しいくらい気に入った。
一概に高いものがいいとは限らないが、高さには訳がある。
高いからこそ良く見え、大切に使うという気持ちがあることも否定しない。
逆に、訳が分からない(説得力がない)高いものもたくさんある気がするから、そういうのには手を出さないようにしたいし、自分自身の値打ちにも言えること。
僕は価格表を設けていないので、ほぼ言い値で引き受ける。
その際、高く評価いただいた時にはそれに見合う仕事をし、それほどではない場合にもそれ以上の仕事をしたいと思う。